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アーティストステートメント
鴨川に架かる最南端の橋、京川橋のほとりに建つ集合住宅に住んでいる。鴨川もこの辺りまで南下すると都会とは言えないけれど、田舎というにもすこし違和感がある程度の郊外になる。 河川敷は市街地ほどには手入れが行き届いているわけではないので、自然に繁殖した植物に覆われていて、市街地にはあまり見られない狐やイタチといった野生動物も、わずかばかりの自然に守られてひっそり生息している。 少し離れて自分の住む集合住宅を眺めると、自然環境とは不釣り合いなコンクリートの箱が、無作法に川岸に放置されているように見える。 夏の終わり頃は自宅への道の両側の雑草が伸びて、背丈近くにまでなる。植物の力強さを思うのは新緑の頃よりむしろこの季節だ。夕暮れ時はなんだか長い旅行から帰ってきたような気持ちになる。やがて鋪道は両側からの雑草に圧迫されてしまうので、もうすぐ市から依頼を受けた業者によってきれいに刈り込まれ、歩行者やサイクリストにはより快適になるはずだが、私は「もうしばらくこのままならいいのに」と思う。ここで生きている「無口な隣人たち」のために、毎年この季節に思う。
アンカー 1

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